大阪家庭裁判所 昭和35年(家イ)1227号 審判 1960年12月01日
申立人 添田久枝(仮名)
相手方 添田行雄(仮名)
主文
申立人と相手方とを離婚する。
双方間の長男一男(昭和二二年一〇月○○日生)、長女雅子(昭和二四年三月○○日生)の親権者を、いずれも母たる申立人と定める。相手方は上記一男及び雅子に対し、昭和三五年一二月より各人が義務教育を終了する月に至るまで、一人につき月額七五〇円宛を毎月二〇日限り鳥取家庭裁判所倉吉支部に寄託して支払え。
理由
当初における本件申立の趣旨は、双方間の二子の養育費として相手方に対し毎月四〇〇〇円の支払を求めるというにあり、その実情として、申立人は相手方と昭和二二年二月八日婚姻して長男一男、長女雅子をもうけ、申立人は農業に精励し、相手方は洋服仕立職をしていたが、相手方はある女性と懇ろになつて申立人母子を顧みなくなり、借財を重ねた末昭和三三年七月頃某女生を同伴して大阪に移り、以来申立人らの生活費も子の養育費も送金してこないので本件申立に及んだ、というのであつたが、その後申立人は相手方との離婚を決意し、上記養育費のほか主文第一、二項同旨の調停をも併せ求めるに至つた。
本件調停期日に出頭した相手方は、離婚及び子の親権者を申立人とすることには同意し、子の養育費については、同棲していた女が双生児を出産してすぐ死亡し、双生児は現在保育園に入れているが毎月相当額の保育料を支払わねばならないため、申立人の希望額には到底応じ難いが、子が義務教育を終了するまで一人につき月額七五〇円程度なら送金すると述べ、これに対し申立人は、鳥取家庭裁判所倉吉支部調査官香月良雄の昭和三十五年一〇月三日付、同年一一月八日付各調査報告書によると、相手方の経済事情から考えると上記金額をもつて一応満足するほかないと考えていることが認められる。
申立人は遠隔地に居住し調停期日に出頭しなかつたため、結局調停は成立するに至らなかつたが、上記のとおり離婚、親権者指定、子の養育費について双方間に実質的な合意が成立しているのであるから、本件は調停に代る審判をするのが相当と考え、調停委員前田常好、同長岡静子の意見を聴き、双方の経済状態その他一切の事情を考慮したうえ、家事審判法第二四条を適用して主文のとおり審判する。
(家事審判官 藤野岩雄)